新着情報

シェアリング・エコノミーとはなにか?:ビジネスモデルと法律の関係を探る(隅田ゼミ)

東京富士大学では学生たちの実務IQ(社会で輝く力)を高めるために、様々な取り組みを行っています。その取り組みの一つが、専門ゼミに所属する学生たちが一年間の研究成果を発表するゼミ発表大会です。発表大会に至るまでの入念な準備の中で、思考力、主張力、突破力などのを高めることをその目標としています。

 

全報告の中からいくつかピックアップしたプレゼンテーションの内容をギュギュっと凝縮して、高校生の皆さんにお伝えしていこうと思います。この機会に、大学のゼミでの学びをイメージしてみてください。

 

 

【報告要旨】

シェアリング・エコノミーとはインターネットを通じて使われていないものや空き時間をシェアするものです。シェア(=分かち合う)の対象はさまざまなものがありますが、隅田ゼミでは、「場所」と「移動」のシェアについて研究しました。

 

場所のシェアリング・エコノミーのひとつが民泊です。家を貸す人は使っていない家でお金が得られ、宿泊者は安く宿泊することができ、仲介業者は両者から仲介料を取ることができるという三者が利益を得られる新しいビジネスモデルです。このような民泊ビジネスが日本で注目されている理由は、外国人観光客の急増です。政府は2020年までに外国人観光客数の目標を年間4,000万人と設定しています。ホテルだけでは外国人観光客を受け入れられないという宿泊施設不足が民泊増加の背景にあります。

 

ただし、問題点もいくつかあります。さまざまな基準をクリアできた施設のみが民泊を営むことができるのですが、旅館業法を守っていない違法民泊があります。違反者への取り締まりは保健所に任されており、監視が緩く違反者を捕まえにくいことがあります。

 

この問題に対して政府は民泊新法を制定しました。民泊を営業する際に政府への登録を義務付けるなど、参入のハードルを上げるだけではなく、罰則に関しても厳格化しました。これにより、合法民泊の増加、違法民泊の減少が期待されます。民泊という新たなビジネスモデルは、既存業界との対立を生じさせています。

 

例えば、フランスではアパートの所有者が民泊を始めたためにアパートの家賃相場が急上昇しました。そのため、賃貸契約の更新が困難になり、住宅不足になっています。人気の観光地周辺では賃料の上昇によって住民が減少してしまったために学級閉鎖という事態が生じています。

 

 

次に、移動のシェアについて述べます。ライドシェアとは、アプリを通して車に乗せて欲しい人と車を所有している一般の人をマッチングさせるシステムのことです。業界最大手はUber(ウーバー)社です。ライドシェアのメリットとして、タクシーよりも安い、アプリの位置情報を利用してどんな場所でも呼び出せる、ドライバーは空き時間にお金を稼ぐことができるなどが挙げられます。

 

しかし問題もあります。それは、なによりも安全性に関することです。日本でタクシーやバスを運転するには、第二種運転免許が必要です。これは条件の厳しい資格です。しかし、ウーバーのドライバーはプロではない普通免許を持った一般人です。日本では道路運送法により、タクシーやバス以外で人を乗せてお金をもらうことが認められていません。ただし、例外があります。2006年に改正された道路運送法により、高齢化や過疎化が進んだ公共交通空白地限定でライドシェアが認められています。

 

シェアリング・エコノミーにおいて、民泊は推進される一方で、ライドシェアは厳しく規制されています。民泊は2020年までは増加させる必要がありますが、2020年以降の問題が残されるでしょう。ライドシェアに関しては、安全性に問題があると指摘する一方で公共交通空白地においてのみ認めるというのは矛盾しています。

 

また、過疎地ではこのビジネスモデルは成り立ちません。政府の意向によって新たなビジネスの成否が大きく左右されるのは問題です。政府は規制緩和を行い、企業間の競争を促すべきであると提案します。それは、消費者へのより良い商品やサービスの提供につながるであろうと考えます。