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「ブラック企業は本当にホワイト化できるのか」(円城寺ゼミ)

東京富士大学では学生たちの実務IQ(社会で輝く力)を高めるために、様々な取り組みを行っています。その取り組みの一つが、専門ゼミに所属する学生たちが一年間の研究成果を発表するゼミ発表大会です。発表大会に至るまでの入念な準備の中で、思考力、主張力、突破力などのを高めることをその目標としています。

 

全報告の中からいくつかピックアップしたプレゼンテーションの内容をギュギュっと凝縮して、高校生の皆さんにお伝えしていこうと思います。この機会に、大学のゼミでの学びをイメージしてみてください。

 

【報告要旨】

ブラック企業についての明確な定義はありませんが、本報告では、違法な労働を強いて労働者の心身を危険にさらす企業をブラック企業として定義したいと思います。こうしたブラック企業に対して厚生労働省は、労働関係法令に違反した疑いで送検された企業を2017年5月から公式サイトで公表する制裁措置を行っています。

 

ブラック企業に関する先行研究の概要についてまとめますと、大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつは、ブラック企業それ自体の特徴についてであり、もうひとつは、企業がブラック化する要因についてです。これらの先行研究を踏まえたうえで、円城寺ゼミではブラック企業がホワイト企業に転換する過程(”ホワイト化”)について研究しました。

 

事例として、ワタミ株式会社(外食事業)を取り上げます。ワタミに対してブラック企業のイメージがついたきっかけは、2008年6月に新入社員の女性が入社後2か月で過労自殺をしたことです。厚生労働省が定めた過労死労働ラインである月80時間残業を大きく越えた残業を強いられていました。

 

ワタミの(”ホワイト化”への)取り組み5つを見ていきたいと思います。

① 年間会議研修時間の削減☜(考察)労働基準法は守られている。

② メンタルヘルス相談窓口の設置☜2014年5月から義務付けられている。

③ 店舗休業日の設置(約90店舗)☜対応としては当然。

④ 人事部が勤務時間数をモニタリングして注意喚起☜本人以外が労働時間を管理することで本人が気づかない長時間労働を防ぐことに有効。

⑤ 業務の効率化(少人数でも対応可能なように電子端末を導入)☜技術の発展によって他の企業も導入する可能性あり。

 

労働環境の改善には重要な要素が多く含まれていますが、これらの取り組みがホワイト化にとって十分かどうかは疑問が残ります。

 

 

労働者の安全や健康を確保するために積極的に対策に取り組んで、高い安全衛生水準を維持している企業は、「安全衛生優良企業」として2015年6月から公表されています。厚生労働省が考えるホワイト企業の要素は、労働時間は法律の範囲内であること、業務内容は達成困難なノルマを課さないこと、賃金水準が業務内容に見合っていることを条件としています。

 

しかし、これらの条件を満たしていればホワイト企業であると言えるのでしょうか。ホワイト企業の特徴として、東洋経済の調査を参照すると、離職率が低いということ、研修制度が充実していること、休みがとりやすい環境であること、これら3つの要素を挙げています。

 

統計数理研究所によると、日本人の働き方はみんなと同じ行動、思考、発言が求められています。そこには同調圧力があると考えられます。これは有給休暇の取り方に関係していると推測されます。自分が休むと他者に迷惑をかけるという考えから有給取得率は約50%となっています。ここから労働環境の重要性がわかります。

 

先述した統計数理研究所の調査によると、就職の第一条件は仕事の達成感であり、第二条件は良好な人間関係です。これらの条件を満たすためには、働き方に選択肢を与えるべきだと考えます。経営者は従業員に労働を期待する一方、従業員は自分に合った働き方を経営者に期待しています。経営者と労働者の双方の期待を満たせる環境こそが重要だと考えます。

 

以上、ホワイト企業として満たすべき要素について述べてきました。今後はワタミ以外のケースを増やして、ブラック企業がホワイト企業へと転換する要素をさらに抽出していきたいと考えます。