学長メッセージ ~新学期を迎えて

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学長メッセージ ~新学期を迎えて

 いよいよ5月4日(月)から新学期の授業が始まりますので、春学期を迎えるにあたって皆さんに伝えたいことがあります。
 本学の教育理念に「人道による世界平和」があります。なぜ「人道」が「世界平和」と結びつくか、今回のコロナウィルス感染症を例に説明しましょう。

 マスクは「自分を守る」ものではなく「他人にうつさない」ものと気づいたら、皆さんは少し他人への配慮を持つ人間になれます。スーパーで食料品を買い占めている人たちは、せいぜい家族のことしか考えていません。列が長くなれば、周囲の人たちやレジを打っている人を感染させるリスクが高まります。皆さんの生活用品を陳列・販売してくれている人は、リスクを背負って社会を支えてくれているエッセンシャルワーカー(重要な人々)です。つまり「自分→家族→周囲の人→社会を支える人」と視点を変えていくと「人の道」が見えてきます。
 今回のウィルスのやっかいなところは、広い範囲で動き回る若い人があまり重症化しない点です。だから、皆さん自身が「間接的に」高齢者や持病のある人にうつして、被害を拡大させる可能性があります。この「間接的」というところが「人の道」に入る「社会的視点」の源です。

 本学が授業もオンラインで行おうと決断したのは、もちろん皆さんの健康を第一に考えてのことですが、それだけでなく若い人に"Stay Home(在宅)"をお願いしたいからです。失礼な言い方ですが「社会的視点」に立てば、皆さんが電車に乗って大学まで来る間にも感染リスクが高まるのです。
 もちろん、オンライン授業は皆さんにとっても初めてで戸惑うことが多いと思います。本学にとってもオンライン化への全面移行は初めてのことでご迷惑をおかけすることになるかもしれません。しかし、大学がクラスターになってはいけないというのが本学の良識です。皆さんやご家族の健康はもちろんのこと、社会の安全を確保するためには、当面、オンライン化が最善の選択肢だと考えています。
 そのほかにも、今回のことで、就職活動を控えた4年生、帰国できない留学生、一人暮らしを始めた新入生、アルバイト先が見つからない学生など、不安や孤独の中で過ごす人も多いと思います。本学では、最新のメッセージをホームページに掲載していますし、担当部署がメールや電話でいつでも相談に乗れるようにしています。悩み事があれば、遠慮なく相談してください。

 今は、行動変容(行動の仕方を変えること)が求められています。人の行動は、他人に指示されたり命令されたりすることでは変わりません。緊急事態宣言が出たから外出を控えるのではなく、自分で考えて行動するのです。今回のように「出口の見えない」あるいは「正解のない問題」に直面したときに、自分で考えて解決していく力のことを、本学では「実践力」と呼んでいます。完璧なことはできなくても、限られた環境の中で学んでください。その中で考えたことが、長い人生では大きな糧になると確信しています。
 日本は、命令や罰金で動く国ではありません。日本人は「分をわきまえ」「節度をもって」行動できる民族です。「人道」の精神は、強制力のある法律や命令よりずっと「知的」で「継続力」があります。大人になる一歩が「自粛」「自制」だということを「自覚」したとき、あなたは知的な大学生になります。
 繰り返します。私たちが「自分→家族→社会」と視点を変える時、「人道による世界平和」が実現するのです。あなた方一人ひとりの正しい行動が、人類を救い、世界に平和をもたらすのです。
 今、私たちは試されています。今回のことは大きな試練ですが、これをポジティブに受け止めましょう。しばらくは辛抱の時間が続きますが、本学の理念を肝に銘じつつ、一緒にこの難局を乗り切りましょう。

東京富士大学学長 井原久光